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東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)180号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔第二 請求原因〕

一 特許庁における手続の経緯

原告は名称を「塩化ビニルを包含する単量体物質を重合させる方法」とする特許第二四六二四三号(昭和三一年一一月九日出願、昭和三三年一〇月一七日出願公告、昭和三三年一〇月一七日登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。被告は昭和三八年一〇月一七日、原告を被請求人として、特許庁に対し本件特許につき無効審判の請求をした(昭和三八年審判第四六五三号)。特許庁はこれに対し昭和四一年七月二三日「本件特許を無効とする」旨の審決をし、その謄本は同年八月一七日原告に送達された(出訴期間として三ケ月を付加)。

二 本件特許発明の要旨

主として重量で単量体一部に対して二ないし四部の水、重量で単量体一〇〇部に対し0.02ないし0.15部の水溶性繊維エーテル(メチルセルローズおよびメチルヒドロキシプロピルセルローズよりなる群から選ぶ)、重量で単量体一〇〇部に対して0.02ないし0.15部のイオン性乳化剤、および重量で単量体一〇〇部に対して0.02ないし0.15部の前記乳化剤に対する凝固剤たる水溶性多価金属塩よりなる水相中に、触媒的量の油溶性過酸化物重合触媒を含有する塩化ビニルを包含する単量体物質を分散させ、重合粒子の分散液を重合が終るまで攪拌下に二五ないし六〇度Cの温度に維持して実質的に均一な、自由流動性の、高度に可塑剤吸収能を有する粒子を製造させることを特徴とする塩化ビニルを包含する単量体物質を重合させる方法。

三 審決理由の要点

本件特許発明の要旨は、「単量一〇〇部に対して」(三個所)とあるのを「単量体一部に対して」と改めるほかは、前項掲記のとりである。ところで、本件特許発明の明細書の特許請求の範囲の項には右認定の発明の要旨と同一の記載があるが、その発明の詳細な説明の項の一般的説明および実施例中の水溶性繊維素エーテル、イオン性乳化剤および水溶性多価金属塩の三者の使用量の記載は、特許請求の範囲記載の三者の使用量(重量で単量体一体一部に対して0.02ないし0.15部)より一貫して著しく僅少であつて、その範囲内に含まれない数値である。しかもこの三者の使用量は本件特許発明にとつて最も重要な発明構成要件であるから、本件特許発明の明細書は、発明の実施に必要な事項を記載せずまたは必要でない事項を記載して発明の実施を不能または困難ならしめているものである。よつて、本件特許発明は、特許法施行法第二五条第一項、旧特許法(大正一〇年法律第九六号)第五七条第一項第三号により、無効とすべきである。

四 本件審決を取り消すべき事由

本件特許発明の明細書の特許請求の範囲の項に審決認定のとおりの記載があることは認める。しかし、特許庁は、昭和四四年六月二〇日、本件特許の訂正審判事件(昭和四二年審判第七四〇号)につき、右記載のうち「単量体一部に対して」(三個所)とあるのを、前記二のとおり、それぞれ「単量体一〇〇部に対して」と訂正すべき旨の審決をし、右審決は確定した。したがつて、本件特許発明は、特許法第一二八条により、訂正された明細書によつて出願、公告、登録されたものとみなされる。そして、右訂正された明細書には、審決認定のような特許請求の範囲の項と発明の項との間の齟齬は存在しない。よつて本件審決は、本件特許発明の要旨を誤認したことに帰し、その結果旧特許法第五七条第一項第三号の無効原因がないのにかかわらず本件特許を無効とすべきである、としたものであるから、違法として取り消されるべきである。

第三 被告の答弁

原告主張の請求の原因事実は全部認める。

〔判決理由〕原告主張の請求原因事実は全部当事者間に争いがない。右事実によれば、本件審決は、原告主張の違法があることが明らかであるから、取消を免れない。

よつて原告の請求を認容……する。

(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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